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「この指とまれ!」で作る、いい居場所といい未来 - 阿部広太郎氏トークショー

東京ENGAWAの名付け親でもあるコピーライターとして活躍する阿部広太郎氏が、実際に提案で使われた企画書をもとに、「言葉と居場所の関係」について語る。
boundary spanner株式会社が運営するシェアスペース東京ENGAWAにて、スペース名の名付け親でもあるコピーライター阿部広太郎氏による「いい言葉が、いい場所をつくる」をテーマにトークショーを開催。実際に提案で使われた企画書をもとに、言葉と居場所の関係について語りました。

スピーカー

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阿部 広太郎
コピーライター/企画プロデューサー
1986年生まれ。2008年、電通入社。「世の中に一体感をつくる」という信念のもと、言葉を企画し、コピーを書き、人に会い、繋ぎ、仕事をつくる。映画「アイスと雨音」プロデューサー、ダイアログ・イン・サイレンス「おしゃべりしよう」、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」主宰。宣伝会議コピーライター養成講座「先輩コース」講師。初の著書『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)を出版。


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山田 浩司
新事業創出支援のboundary spanner,inc代表。Web×レガシー領域が専門。シェアスペース東京ENGAWAも運営。京都精華大学にて、非常勤講師つとめつつ。趣味では食系サービスによく関わっている。肉会、日本ホームパーティー協会、グランピング雑誌Glamp。

阿部広太郎トークショー『いい言葉が、いい居場所をつくる。』@東京ENGAWA

2017年7月22日(土)

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山田 浩司
皆さん、今回はシェアスペース東京ENGAWAのクラウドファンディングのご支援頂きありがとうございます。
今回リターンの1つとして「東京ENGAWA」というコピーを考えて頂いたコピーライターの阿部くんのセミナーを開催させて頂きました。阿部くんとの付き合いは長くて、社会人1年目でまだ阿部さんが人事をやりながらコピーライターを目指している時からの付き合いで、お互いそのうち一緒に何かやりたいねと言ってました。
今回、スペースを作る上で、ぜひ旗印になる言葉を作って欲しいと思ってお願いさせて頂きました。そんな経緯もあり、コピーライターとして大活躍をしている阿部さんに「言葉や場所づくり」という視点で色々話してほしくて、本日の開催となりました。では阿部さん、よろしくお願いいたします。

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阿部 広太郎
はじめまして、コピーライターの阿部広太郎です。これまで携わった仕事で、みなさんが知っていそうなのは、東進ハイスクールのCM(『生徒への檄文』篇)ですね。林修先生の『今でしょ!』という言葉が生まれたCMです。2010年にCMが放送されて、3年間かけて流行語大賞になっていく。広告のダイナミズムを体験した仕事でした。僕の中に、「世の中に一体感をつくりたい」という思いがあり、コピーや、企画の力で、そんな時間を生み出していけたらいいなと考えています。

今日は「いい言葉が、いい居場所をつくる。」というテーマで話します。最近、コミュニティをどうしたらつくれるかの関心も高いですよね。


東京ENGAWAのコピーがどうやって生まれたのか?


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阿部 広太郎
ネーミングの相談をされた時には、後楽園エリアの地図と、物件の図面しかありませんでした。後楽園のエリアで再開発があり、近くには東大があると。
そこから、山田くんに話を聞いていって、最終的に僕は「東京ENGAWA いろんなご縁に会いにきて」というコピーをつくりました。

今日は「名付けた経緯」「言葉づくりと場所づくり」「いい居場所ってなんだろう?」という3つについて話していけたらと思います。

はじめに「これからも縁の側にいれたらいいな」というポスター(PDF)を紹介します。東京ENGAWAのオープニングの時に、なぜこの場ができたのかの経緯を、お客さんと共有したいと思ってつくりました。山田くんに改めて、経緯を伺おうと思います。


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山田 浩司
もともと、最初はこの場所で何かをする気はなかったんです。後楽園周辺が再開発予定でして、3年後には更地になって高級マンションが建つんです。友人が区画整理の仕事をしていて、この土地の活用法に困っていたんですね。飲みの場で、駐車場や民泊の施設にするのも良いけど、どうせ無くなっちゃうなら何か面白いことがしたいよね、という話で盛り上がりました。

最終的には「色々言うなら山田やってみろよ」みたいな感じで。

どうせだったらいろんな人が集ってくれるような場所になったらいいな、どうやったらいろんな人が揃ってくれるかな、と考えたときに、旗印になる言葉が必要だと感じました。人のあたたかさやポジティブにする言葉と言えば、やっぱり阿部くんにやって欲しい。そう思ってお願いしました。
ちょうど阿部くんが『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』の本を出した直後くらいで。


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阿部 広太郎
そうでしたね。昨年の夏ですね。

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山田 浩司
「何をしようかな?」と考えていたのが、ちょうど本を読んでいた時だったんです。
刺さる言葉が多くて、「待っていても、はじまらない」と動き出す人たちが、集って色々なことができる場所にしたいと思って、阿部くんに相談しました。

僕のふわっとした話だったにもかかわらず、阿部くんが素敵な企画書を作ってくれて。

そのときに彼が「東京ENGAWA」というコピーを考えてくれました。ロゴも、阿部くんが一緒にお仕事されているアートディレクターの瀧亜沙子さん(瀧亜沙子-電通報)に素敵なものを作って頂きました。

周囲の友人たちに「実はビル借りちゃったんだよね」とFacebookなどで告知をすると、「何それ、面白そう!」「何かやることあったら手伝うよ」と予想以上の反響がありました。リノベーションは延べ30人以上の人に参加してもらい、みんなで壁や天井をペンキで塗りました。色んな人たちの協力があって3ヶ月かけて完成しました。
そこで知り合った人同士で一緒に仕事をしたり、新たな関係が築かれているのを見ると嬉しく思います。


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阿部 広太郎
そうなんです。入ったところにベンチは、山田くんのご友人の方が緑の装飾をほどこしたり。本当にしりとりみたいに、縁がつながって完成しているんですということを伝えたくて、先程のポスターをつくりました。
山田くんから相談を受けてから、どう名前を考えたのかをお話ししますね

コピーは“問い”を見つけることからはじめる


企画書(PDF

企画書の補足をすると…
面白いから買ったと言うには高すぎる買い物ですよね。お互い同世代で30代になってこれから仕事盛りとは言え、間違いなく勇気のある投資だったと思うんです。
場所の名前をつけるにあたって「なぜこの場をつくるのか」という動機は、名付ける上で超大切です。
山田くんが普段仕事をしている社名は「boundary spanner(バウンダリースパナー)」。その意味は「境がある部分を越えていく人」。そこから転じて「異なる価値観を持っている同士を繋げる」と言う意味もあります。ここがヒントになると考えました。異なる価値観と価値観をつなげることで、新しい可能性が生まれます。山田くんを近くで見ていて、人をつなげて、集めて、混ぜて…まさしく山田くん「らしい」働き方なんですね。
Diversity」という言葉、時代のキーワードにもなってますよね。1つの価値観にしばられず、いろんな出会いを楽しんで、いろんな価値観を持った人と遭遇することによって、自分というものの可能性を発見していくことが大切な世の中になってきました。
山田くんのやりたいのは、「出会いの交差点」なんだろうなと。偶発的な出会いが生まれるような居場所づくり。出会うことによって可能性を広げたい。だからこの本郷4丁目の物件を借りたのだと、僕はそう解釈しました。
山田くんの奥底にある熱い思いが多くの人に伝わらないともったいない。いろんなひとに広がっていくような名前にしたい、その思いを託した名前が「東京ENGAWA」。提案の後に、「TOKYO」から「東京」に変えました。
そしてサブコピーに「いろんなご縁に会いに来て」と添えました。
「縁側」というイメージを提案したいなと思って。居るだけで癒される場所。内と外とが曖昧で、いろんな人に出会う場所。この企画書から、東京ENGAWAは動き始めました。

生まれた場所だけが地元じゃない。恵比寿じもと食堂


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阿部 広太郎

次に、「言葉づくりと場所づくり」の話を。意図しているわけではないのですが、居場所に名前をつける仕事が多くなってきているんです。今回はその中からいくつか紹介しますね。

まず、「恵比寿じもと食堂」のネーミングです。
みなさん、「こども食堂」ってご存知ですか?両親が共働きだったり、一人親だったり。食事がファストフードが中心になってしまって、栄養のある食事がなかなか摂れない「孤食」のこどもたちが増えているそうなんですね。そのこども達に栄養たっぷりのごはんを安価で食べてほしい、そんな思いで大田区ではじまったのが「こども食堂」です。今では全国に広がっています。
恵比寿で「こども食堂」をやろうとしている末岡マリコさんという方がいると、恵比寿新聞の編集長のタカハシケンジさんから伺ったんです。ネーミングを相談したいと、連絡もらって。僕は今、恵比寿に住んでいて、街の活動を言葉で応援したいと思っているので、力になりますと即答したんですね。
考えるべきは「どうして名前を新たに考えるのか?」です。話を伺っていくと、報道される時に「孤食」がクローズアップされてしまい、「こども食堂に行ってるのは貧しい子たちなんだ」というイメージがついてしまったのだと。知らなかったので驚きました。
タカハシさんと末岡さんの話を、更に伺っていくと、こどもたちの食堂つくりたいのではなく、都心におけるご近所付き合いをつくりたい!という話だったんですね。みなさんも、マンションの隣の人と顔を合わせてもぎこちなく会釈をする、なんてことありませんか?
目指すは、子も親も、知り合えて、そして災害時など困ったときは寄り添い合える関係。なにをつくればその関係はできるんだろう?ということを考えます。
ああ、これは「誰かの地元をつくる」ということだ!と。恵比寿に住んでいるのは、生まれが恵比寿の方もいると思うのですが、多くは上京してきたり引っ越してきたりした人たちです。自分の生まれ故郷も「地元」ですが、今住んでいる場所も地元と言えるんじゃないかなと。
次に考えるのは、どうすれば「地元」になるのか?です。そこで、顔なじみが増えて、「ただいま」「おかえりなさい」が言えることだと気付くんです。あと、クリアすべきは「外から来たら地元だなんて言えない」という人を肯定することです。あなたの地元ですよって。そこで辿り着いたのが「恵比寿じもと食堂」という名前と、「おかえりなさい、恵比寿はあなたの地元です」というコピーです。
恵比寿じもと食堂」の名前を考えることで、「言葉は存在を与え、名付けは生命力を持たせる」ということに、改めて気付かされました。

企画する人を世の中に増やす。企画メシ


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阿部 広太郎

もう1つ紹介したいのが、僕が主宰をしている「企画でメシを食っていく」という居場所です。
僕は、社会人になって最初、人事に配属されたんですね。それからコピーライターになって。そんな自分だからこそできることがあるんじゃないか、という思いで2015年からはじめました。横浜みなとみらいにあるシェアスペースBUKATSUDOで開催しています。
コピーを書くということは、誰しもが使っている言葉に企てを加えていくということであり、「言葉を企画する」こと、だと考えています。
企画という行為は、「幸福という目的を達成していく」ことだと思います。企画する人が増えたら、世の中はポジティブに変わっていくと思っていて。
企画は、ピンチをチャンスに変えられます。可能性を見つけ出して輝かせることができます。企画メシのWebページを見ていただければ詳細が載っています。

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山田 浩司

企画メシは、毎年ゲスト講師が豪華ですよね。

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阿部 広太郎

そうですね。30代を中心に最前線で活躍している人たちをお招きしています。

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山田 浩司

ピースの又吉直樹さんとか、ラッパーの晋平太さんやクリープハイプの尾崎世界観さんとか。

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阿部 広太郎

「企画メシ」で感じているのは、場所における名前の大切さです。志を名前にすることで、意識に刷り込まれていくものだなと。

いい居場所ってなんだろう?


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阿部 広太郎

最後の話、「いい居場所とは何か?」の話を。これは、みなさんにも聞きたいです。
観客から回答)
「会社」「趣味の登山のメンバー」「家」「事務所」「スタジアム」「飲み会」「実家」「大学のゼミ」…など。

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阿部 広太郎

ちなみに山田くんはどうですか?

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山田 浩司

うーん。関わってくれた人たちと話す、その瞬間瞬間が「居場所」かな。それを具現化したくて、東京ENGAWAという居場所を作っちゃいました(笑)

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阿部 広太郎

なるほど。「場所」と「居場所」の違いを考えてみます。「居場所」の「」という字は、「腰をかける」という意味があります。
自分がある一定期間、そこに居ることができるとか、居たいと思えるとか。そこで満足感を得られる場所が、「居場所」だと僕は思っています。
今みなさんがそれぞれの居場所を挙げられた中で、その居場所を最初につくった人が居ると思うんですね。会社も、スタジアムも、研究室も、最初の一人がいる。
僕、「この指止まれ!」という言葉が好きなんです。「自分はこういうようなことをしたい」という思いを持って、みんなに呼びかける。社会人になった今だとSNSを使って誰かに何かを呼びかけることもあると思うんですけど、「こういうことをしたいと」SNSで投稿することで、周囲の反響も得られて。東京ENGAWAの場合も、600くらいのいいねがつきましたよね?

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山田 浩司

ありがたいことに、いいねやシェアで、どんどん広がっていって。

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阿部 広太郎

そのときに、何をもって「この指止まれ!」と言えるのかが、重要だと思います。「こういう気持ちでやります」というのをうまく伝えられれば、多くの共感を得られます。

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山田 浩司

コピーを含めて「この指」がしっかりしていたからこそ、東京ENGAWAはたくさんの人が協力してくれたんだと思います。

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阿部 広太郎

僕自身にとっての居場所とは、「意志のある場所」だと思っています。 東京ENGAWAの場合も、山田くん奥底にある意志から始まってて、それを伝えるために言語化しなきゃいけなくて。コピーは、その人の内なる思いを、咀嚼して言語化することです。 意志をキャンプファイヤーに例えると、いつか燃え尽きてしまうので薪をくべる必要があります。言い出しっぺのリーダーは心を配り、気を配り続けることによって、人が集まり続けることができる。僕は山田くんの活動を見て、まさしくそれをしてるなと。

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山田 浩司

ありがとうございます。少してれますね(笑)

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阿部 広太郎

僕は今回、「言葉づくり」で東京ENGAWAの入り口は作ることができました。話を聞いていると、地元住民の方も興味を持って中に入ってくる方も居るらしいですね。

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山田 浩司

そうなんです。今日は通り沿いのガラス扉を開けていたんですけど、ふと見たら1階のベンチに若いカップルが座っていて。「通りがかったんで入っちゃいました」と(笑)。

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阿部 広太郎

そんなことが(笑)

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山田 浩司

たぶん阿部くんが書いてくれた、表に貼ってあるコピーを見たんだと思います。他にも「フリースペースなのかな」と入ってくる方も多くて。もちろんそれは大歓迎なので、今後どうしようか考え中です。
他にも東京ENGAWAの裏に住んでるおばあちゃんから「自宅に1人で居るお年寄りが多く住んでいるので、週に1回くらい、平日の昼にベンチでお茶会をやりたい」という相談なんかも受けていて。
今、文京区職員の方々とどういう風に実現するか検討しています。なかなか近所に住む70代や80代の人と話す機会はないので、これからが楽しみです。

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阿部 広太郎

まさしく、入り口と「東京ENGAWA」という名前だからこそ、興味をそそられてふらっと来てくれる人が居て。たぶん、違った名前だったら…
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山田 浩司

確かに「文京区 レンタルスペース 1時間1000円」とか書いてあったら誰もワクワクしないですよね、間違いなく(笑)

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阿部 広太郎

入り口の重要さというのはあると思いますが、やっぱり物事は中身がすごく大事です。次は何をするか。企画しつづけないといけない。

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山田 浩司

そうですね。企画することで、そこに集まる人からさらに面白い人が居て集まってきて。どんどん繋がるし、広がっていきます。

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阿部 広太郎

GoogleMapにも、「東京ENGAWA」で登録されています。 山田くんの最初の想いが名前になり、地図に登録され、そこに人が集うというのは面白いですよね。
皆さんも場を作るときには、「なぜこの場をつくりたいのか」どんどん掘り下げていってください。そこがすべてのはじまりです。人って結局、内なる思いの部分でしか共鳴できないんです。
だからこそ、いい言葉が、いい居場所をつくるのだと思います。

参考リンク


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2017/09/29 15:30
東京ENGAWA

東京ENGAWA

boundary spanner,incが運営するシェアスペース 東京ENGAWAに関わるストーリーを記載していきます。

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ENGAWA ストーリー

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3年後に取り壊しのビルをリノベーション。人と人とが関わりあって「ご縁」がつながる空間。コミュニティスペース、撮影スタジオ、イベントスペース、貸し会議室。 やりたいことがやれる「何でもアリ」の物件に、あなたのご縁を作りに来てください。

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