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元証券アナリストが語る、現在のIRの課題と決算説明書き起こしの意義

プロ投資家は決算説明会の全文書き起こしをどう思っているのか? 元外資系証券アナリストに話を伺ってきました。
ログミーファイナンスのディレクターをやっている児玉です。こんにちは!
ログミーファイナンスは決算説明会の内容を全文書き起こして誰でも読めるようにするサービスなのですが、おかげさまで企業とのお取り組みや投資関連サービスとのアライアンス数も順調に増えてきています。
そこで、なぜいま決算説明会の書き起こしが必要とされているのか、投資家や企業にとって具体的にどういった利用価値があるのかを、機関投資家向けサービス「みんなの説明会」(以下、みんせつ)の代表で、元外資系証券アナリストの中安祐貴さんに聞いてきました。

特定の投資家だけが有利な情報を得られる、日本のIRの現状

ーーこんにちは!
こんにちは。今日は思うことをつらつらしゃべらせてもらっていいですか?
ーーぜひぜひ。ではさっそくですが、現状のIRや決算説明会にはどのような課題があると思われますか?
決算説明会はまだまだ閉鎖的なイベントです。多くの説明会が、事前に案内した投資家・アナリストしか参加できないような仕組みになっているんですよね。会場の入り口で「案内状持ってますか?」みたいな。機関投資家ですら、案内状を持っていなければ入れない場合が多くそこで投資家間に情報格差が生まれてしまいます。
結果として、決算説明会に行った人だけが有利な情報を得て、その次の日に株価の“ポジションをとれる”(※注:資産をどういった状態で持つべきかを決めることができる状態)ケースがよく見受けられます。
これって、フェアディスクロージャールール(※注:株価に影響されると考えられる情報は、投資家に対して、公平かつ速やかに開示する必要があるという規制で、2018年春から本格的に導入される見込み)に反するリスクが生まれてくると思うんですよ。
ちなみにアメリカだと、説明会は基本的にカンファレンスコール(電話会議)で行われ、その電話回線は一般に開放しているんです。さらに同時にネットで音声とかも流していたりします。一般の個人投資家も聴けるような状態になっているんですね。
限られた時間の中で品質を維持するという理由で、質疑応答に参加できるのはプロの投資家・アナリストだけというのは理解できるんですけど、その回答については一般投資家も知られるような仕組みにしていくべきだと思います。
ーー情報の非対称性が生じている、と。中安さんは、「みんせつ」という決算説明会の情報管理サービスを運営されていますよね。これも、そういった課題への危機感からなのでしょうか?
僕らは決算説明会情報をもっとオープンにしていきたいと考えています。既存の投資家保護もそうですけれど、企業が新しい事業を進めていく上で、新しい投資家をどんどん取り入れる必要があると思うんですよね。そのためにもみんせつ上で決算説明会の開催情報をオープンにして、新しい投資家に興味を持ってもらうようなキッカケを作るというのが僕らのやろうとしていることです。
ログミーファイナンスがやっている決算説明会の全文書き起こしも、まさに同じ課題を解決する方法の一つだと思っています。今後、本格的にフェアディスクロージャールールを企業が導入していかなくてはいけなくなったときには、有効なツールだと思っています。
ーーありがとうございます! 

忙しいアナリスト・機関投資家にこそ、全文書き起こしが必要

ーー投資家やアナリストにとって、全文書き起こしにはどのような活用方法があるのでしょうか?
活用の仕方はめちゃくちゃありますね! というのも、投資家とかアナリストって担当している社数がすごく多いんですよ。
上場企業は約3600社ありますが、セルサイド(証券会社)のアナリストだと、多い場合で関連の企業も含めて50~100社を1人で担当します。バイサイド(運用会社)のアナリストで100社前後。ファンドマネージャーで200~300社。
四半期で彼らが1社あたりにかけられる調査時間を計算してみたんですが、セルサイドで5時間でした。たった5時間ですよ? ファンドマネージャーになってくると、1社につき2〜3時間。
だから決算説明会も、開催日時が重複していたり、他社の分析が立て込んでいたりすると出席できないんです。
その際に全文書き起こしがあると、決算説明会のフォローアップにもなるし、参加できた説明会であっても後々分析のために活用できる、と。
ーー決算説明会に出席したり説明会の動画を観る時間を省けるということですね。
そうです。また、投資家の立場からすると、アナリストや企業によるレポートというのは編集物なのでバイアスがかかっています。そのバイアスがかかっていない、一次情報としての全文書き起こしが読めるというのは非常に有意義ですね。
ーー実際にみんせつを利用しているプロの投資家は、どういった形でログミーファイナンスを利用しているんですか?
みんせつユーザーの行動を見てみると、だいたい決算説明会が終わったその日の夜くらいのタイミングで、ログミーファイナンスの書き起こしを見ていますね。
早い場合では、決算説明会が開かれた当日の夕方前とかには書き起こしが公開されてますよね? ああいうのが一番見られていますね。面白いのは、その日の株価が5%、10%と上下した時に、「いったい説明会でどんな内容が話されたのかな」というので確認されるケースが多いですね。
自分が説明会に参加できる場合は、出席してそのまま投資行動に結びつくということはあります。ただ参加できなかった企業については、あとでログミーファイナンスの書き起こしを確認し、他の情報などと羅列して投資判断につなげるという流れです。
みんせつとログミーファイナンスのおかげで一気通貫の投資判断ができる」という声をファンドマネージャーから頂戴しています。

プロの投資家は1時間の「動画」は観ない

ーー決算説明会に参加できなかった投資家向けに、昨今、その内容を動画形式で配信している企業は多くなってきています。
そうですね。ただ先ほど申し上げたとおり、投資家やアナリストは時間が無いので、音声や動画を1時間じっくり観るというのは厳しいです。私もアナリスト時代、動画をぶっ通しで観たことはなかったですね。1分半でまとめた動画すら観ないです。投資判断につながるような細かい情報がカットされてしまっている場合もあるので。
また、説明会の中で特に聞きたいポイントがあったときに、そこにピンポイントでたどり着くことが動画や音声では難しいです。そういった部分は検索性の高い文字情報じゃないとできないところだと思うんですよね。
ーーすると、動画を観るのは個人投資家が多いということですか?
少なくとも、プロの投資家層は見ないですね。ただいろいろ聞くと、QAだけなら動画があってもいいという声は聞きますね。
ちなみにアメリカのNetflix社のカンファレンスコールはQAからスタートします。説明会資料や補足資料は事前に公開しているので、「そこを見てください」と。質問のない人はオブザーバーで聞いておいてくれと。質問がある人だけが参加できるカンファレンスコールをしているそうです。

投資家側と企業側の思惑のズレ

企業と投資家の間に認識の違いを感じる時があります。企業からすると常に投資家が自社のことを気にかけてくれていて、全てのリリースに目を通してくれていると思いがちなんですけど、実際はそうではない。なにか変な数字が出てきた時には、適時開示を確認しに訪れますが、普段は見てないんですよね。見きれないと言うのが正確な表現かもしれません。
最近のパッシブ投資とアクティブ投資という区分けで見ると、パッシブに金額も寄っているので、アクティブなファンドマネージャーというのは減ってきていると思います。また、証券会社にとってコストセンターになりがちなアナリストも減ってきています。業界全体で、機関投資家+セルサイドアナリストの数が減っているんですね。
それにも関わらず、毎年上場企業って80社くらい増え続けているんで、投資家側と企業側の需給が合わなくなってきている。
だから、現在の決算説明会のやり方だと、お互いに時間とお金が無駄になってしまうんです。書き起こしで済ませられるのであれば、それをIRページに公開して「今回の決算説明に関しては、ファクト情報だけなので、書き起こしを見て下さい」でいいと思います。
我々は、企業側により効率的・積極的に情報を開示していただくと共に、投資家側にも自分の投資スタンスを開示していくような、オープンな環境をつくりたいなと思っています。そういう透明性のある市場を、ログミーファイナンスと一緒に作ることができるといいですね。
2017/08/16 16:00
児玉 拓

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ログミーファイナンスのディレクターをやっています。

こんにちは、ログミーです。(YADOKARI編)

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